知り合いから相談を受けました。
 彼は中学校の英語教師です。
 その英語教師がミミーに「CEFRについて詳しく教えてくれ」というのでした。
 こんな相談を受けたことを周囲に話すと「すごい!金儲けができるじゃん!」なんて言われました(笑)。まぁ、金儲けはおいておいて、彼の相談というのは、「新しい英語の授業スタイルを、生徒たちがみんな嫌がっている」というのでした。
 はい。
 ご存じのとおり、現在、日本人の小学生、中学生、高校生は、新学習指導要領への全面移行という事態を迎えています。昨年度は小学校の全面移行、今年(4月)からは中学校の全面移行、来年は高校の全面移行です。
 その目玉の一つとして、中学校の英語の授業を全て『英語で』授業するというものでした。
 その授業に対し、生徒たちが口々に「英語が分からなくなった!」「英語の授業が苦しい!」というクレームを出しているそうで、当然、近々、行われるであろう保護者会では、親たちからこの点のクレームが来ることでしょう。
 そう。
 そのような状況の流れからの相談でした。
 はい。
 ですのでしっかりと教えてあげました。
「役に立たない英語の授業を70年近くやってきた学校に、いきなり『直接法』なんて無理だよ。」
 こんな感じです。
 今はとにかく「英語で授業をやる」ことで精一杯だと思います。


 では、日本語教師は?

 ミミーが新人だった時代は、養成講座を出てからが勝負でした。
 常勤・非常勤として日本語学校の教壇に立ったばかりの頃は、先輩の先生方からの厳しい指導にさらされました。
 ですよね?
 養成講座を出たからって、日本語教育能力検定試験に合格したからって、すぐに日本語を教えられるはずもありません。だって、いろんな国籍の日本語学習者を相手にした直接法ですから!!
 先輩先生方からの厳しい指導を受け、また、ベテランの先生のテクニックを盗み、揉まれに揉まれて一人前になっていきます。
 はじめの頃は『教科書を教える』のに必死です。『日本語を教える』のではなく『教科書を教える』のです。その違いは『産出』を評価する際、はっきりします。『受容』はペーパーテストでいくらでも評価できますが、『産出』は、そうは行きません。未熟であることがバレバレです(笑)。
 ミミーも作文を添削するたび、先輩先生から叱られました。
 「こんな添削、別に日本語教師でなくてもやれるでしょ?日本語教師を名乗るなら、もっとマシな添削をしなさい!」こんなことを教務主任に言われながら育てられました。
 また、『話す』を評価するには、パフォーマンス評価が欠かせません。パフォーマンス評価には、ルーブリックが欠かせません。こんなこと、つい最近、言われ始めたことではありません。ずっと昔から言われてきたことです。CEFR自体、完成したのが2001年ですから!当然、何となくで評価したのでは叱られます。養成講座で学んだ知識とスキルをフル活用して必死に評価していくのです!
 そんなことを繰り返していくうちに、3年もすれば一人前になれます。
 それが『プロの道』です。

 しかし、現在、後輩の指導が出来る『まともな』教務主任がどれほどいるでしょうか?
 後輩から目標にされるベテラン日本語教師がどれくらいいるでしょうか?

 留学ブームが起きるたびに、ろくでもない日本語学校が新設されます。
 金儲け目的で日本語学校を始める連中が大勢います。
 とにかく学校を立ち上げて金儲けしたいものだから、法務省の告示基準を満たすため、なりふり構わず人を集めます。在職年数が長いってだけで日本語教育能力なんぞほとんどない人間をとりあえず教務主任として認可申請します。申請が通って日本語学校を始めても、在職年数が長いだけでろくに日本語教育なんぞ出来ない教務主任がいる学校の開校です。
 そんな学校に、養成講座でたての新人先生、日本語教育能力検定試験に合格したばかりの新人先生が就職しようものなら、日本語教師人生、お終いです。ろくなアドバイスも、ろくな指導ももらえず、いい加減な日本語教育をつづけ、せっかく養成講座や検定合格のために身に着けた知識もスキルも使わずに数年たてば完全に忘れてしまいます。

 こうやって『日本語教師の質の低下』が起こるのです。

 さぁ、もう想像できるでしょう。
 世の中には、日本語教師養成講座を出て修了証を持っているだけ、日本語教育能力検定試験に合格した合格証を持っているだけで、日本語教育のスキルすら持っていない日本語教師が大勢いることが。
 そんな紙切れ持ってたって、まともな日本語教育が出来なければ意味ないんですよ~!!

 先日、ある日本語教師に『話す』の『発音』の評価をどのように行っているか尋ねたところ、お茶を濁した回答をもらいました。そこで、「日本語教育能力検定試験でも出題されるけど、リズム、アクセント、モーラ、プロミネンス、等々、ちゃんと見てますか?」と聞くと「そんなこと出来る先生、いるんですか?」なんて言われてしまいました(苦笑)。
 いくらでもいますよ。
 出来ない方がおかしいんです!
 だって、養成講座でも学ぶし、日本語教育能力検定試験でも問題Ⅱに出て来るでしょ?

 養成講座修了後、検定合格後、就職した日本語学校の教務がしっかりとした指導をしていれば、当然、そのスキルを使わざるを得なくなり、経験を積めば無意識のうちに日本語学習者の発音のおかしい点、矯正方法が分かるようになります。
 これって、お医者さんが患者の症状を見て病名を判断するより簡単だと思いますよ。
 でもって、お医者さん同様、日本語教師も『国家資格』になるのですから、当然、出来なきゃダメでしょ?
 作文の添削で、ただ変な部分を赤で書き換えるだけなんて、そこらへん歩いてる一般の方だって出来のだから、日本語教師のやることじゃないでしょ?日本語学習者の発音を聞いて、何となく変だ、とか、日本語教師が出す評価じゃないでしょ?

 日本人なら誰でも日本語が教えられる、なんて思い込んでません?


 日本語教育推進法で堂々と謳っています!
 『日本語教師の質の確保』!
 そう。
 『質の低下』を何とかすべく『質の確保』なんでしょう。

 国家資格にする?
 当然、『質が低い』日本語教師なんぞに軽々しく与えるような資格ではないですよね?


 …ということで、我が『うさぎ団』は、あと20ヶ月後に出されるであろう行政側の通達を意識しつつ、『質の確保』を考えていきたいと思います。



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master mimi