さて、前回の続きです。
 日本語学校に襲い掛かってくる巨大な波、或いは、モンスター級の嵐の話です。

 我々、うさぎ団は東京湾の海賊、海賊船ムーンレイカー号の一味です(笑)。
 この波、或いは、嵐の中、この海賊船がどこへ向かうか、考えなければなりません。


●日本語学校
 そもそも日本語学校とはどのようなところでしょうか?日本国内の、いわゆる『法務省告示校・日本語教育機関』とは、どのような役割を持っているでしょうか?
 ひとつは『進学コース』を設けて、海外から日本へ留学を希望する学生に日本語を教育し、(まともな)大学・大学院、専門学校へ進学させる役割です。これがほとんどの学校で、どこの日本語学校でも『進学コース』をメインとしていることでしょう…というより、どこかが『進学コース』で成功したのを真似して日本語学校を立ち上げた、というのが本音でしょうか。
 もうひとつは『会話コース』です。特に進学を意識せず、日本へ留学、言い方を変えれば『遊学』させるコースなんてところでしょうか。或いは、既に日本国内にいる在留外国人等の方へ日本語教育を行う役割で、恐らくかなりの日本語学校がこの2本立ての学校だと思います。そして、どのコースでも在留資格がネックとなり、ビザの問題がなければ普通の学習塾のような各種学校として役割も果たせますが、このビザ問題がややこしくしてくれます。
 その他に、企業が母体だったり、巨大学園グループが母体だったりして、様々な事業を展開しているところもありますが、それらも含めて今一度、日本語学校が果たす役割について考えてみる必要が起きています。

 どこの国でもそうですが、外国人を扱う法律というのが設けられていて、それはその国の憲法にも勝り、日本でも日本国憲法入管法が成立します。時々、この制度に因縁をつけてくる留学生がいますが、よくよく調べてみると彼らの国の方が日本よりもはるかに厳しいということが分ったりします。いずれにせよ、憲法よりも入管法が優先されるから、外国人には『職業選択の自由』はないですし、ましてや、在留資格『留学』では就労が禁止されていますから、就労したい場合は『資格外活動』という特別な許可をとらなければならず、さらに、銀行の通帳までコピーさせろなんて言ってきます。
 そもそもがこのルールなのです。
 参考文献『令和元年6月改訂 Q&A外国人・留学生支援「よろず相談」ハンドブック [単行本]

 出入国管理の厳しい経済大国へ出稼ぎ目的の外国人が入国するには、密入国か留学の方法しかありません。留学の方が安全性が高いため、偽装留学生として日本に潜り込んできます。虚偽の書類を法務省(入管)に提出し、虚偽申請で在留資格を得て日本へ入国し、日本語学校に在籍をしながら資格外活動で制限されている就労時間をオーバーして働く、これが出稼ぎ外国人の王道です。時々、この手の話が明るみに出て経営者が逮捕されたりしますが、海外で虚偽の書類を用意しているのを日本側が知らないはずはありません。虚偽の申請であることを知りながら、時には、偽造書類作成を手伝いながら在留資格申請をするのです。
 当然、日本語学校へは『在籍』が目的なだけであって、本音は日本語の勉強よりも出稼ぎ(あるいは小遣い稼ぎ)が目的ですから、日本語など真面目に勉強しません。真面目に勉強しないから、日本語学校を卒業する段階になっても日本語力がついていません。そのような状況でビザを延長(在留資格の期間更新)をしようと思ったら、日本語能力を厳しく問わない大学、大学院、専門学校へ進学するくらいしか、在留資格『留学』の留学生たちに残されていないのです。もちろん、就労という方法もありましたが、これは極めて狭き道で、日本で真面目に就職しようとしたら日本語学校から就職する道より大学へ進学して勉強して真面目に就活した方が遥かに良いのです。



●モンスター級の嵐
 さて、このような背景のところに今回特定技能1号が設けられました。
 約1,480,000人の人手不足を補うのに、自民党政権は、今後5年で最大345,000人の外国人労働者を受け入れると公約しました。その特定技能1号は、留学生も資格変更が可能なのです。
 では、今後、日本語学校はどうなっていくでしょうか?
 法務省告示校・抹消基準のポイントを今一度見てみましょう。

 CEFR-A2レベルの日本語能力
 大学・大学院/専門学校への進学
 日本留学試験・日本語200以上
 のいずれかを満たす留学生が70%を超えないと、その学校は注意され、3年連続で続いた場合、行政指導が入り、それで無理なら抹消。このの条件のうち、どれに軸足を置くかで日本語学校の指導、カリキュラム、シラバスが大きく変わっていきます。その軸足とは、留学生が日本語学校を卒業後、どの進路に向かうかで決まります。

 これらの条件の中でもっとも簡単にクリアできるのは?
 恐らく日本語能力試験(JLPT)のN4を取得した場合の番でしょう。つまり、特定技能1号への資格変更です。けど、これを軸足にする場合、金銭的問題、経営的な問題が関わってきます…って、もっとも、日本語学校の留学生自身が日本語能力試験N4を素直に受験してくれるかどうかも問題で、N3に落ちたから次もN3を受けるよう指導しているのに、次はN2を受験する!と頑固に言い放って、思い切りN2にかすりもしない留学生、なんてのが普通ですから(笑)。そういった面での難しさもありますが、日本語能力的に楽なのは、明らかにN4です。

 次に簡単なのは?
 現在のところはに該当する大学・大学院、専門学校のうち、少子化で日本人学生が来なくて外国人留学生を大量に入学させて命を繋いでいるいわゆる『いらっしゃいませ大学』『ビザ取り専門学校』の類です。しかし、これに関しては、これの前の記事で書いたとおり、法務省(入管)が、進学の際にN2相当の証明書を提示させるかどうかを検討中です。大学、専門学校への在留資格期間更新を行う際、N2の証明書の提示を求められたら?専門学校へ進学する際、まず日本語能力試験(JLPT)でN2に合格しなければならなくなるのです。難しいに決まっています。
 そう。
 つまり、日本留学試験(EJU)の日本語200以上を目指した方が簡単なのです。
 これは、漢字圏の学生なら放っておいても200を超えます。超えない方が明らかに珍しく、勉強したのに200を超えなかった学生は周囲の同国人からバカにされます(笑)。もちろん、偽装留学生だらけのクラスではない場合ですが。ところが、様々な場面で、この日本語200以上スコアが、日本語能力試験(JLPT)のN2相当だと紹介されています。
 N2
 N2では言語知識を聞いてくる分、遥かに難易度が高いです。なので、の条件をクリアするため大学・大学院、専門学校へ進学するなら、この日本留学試験・日本語200以上が、断然『お得』なのです。



●新針路

 以上の状況から、以下のようなシナリオが考えられます。

 まず、卒業後のいざという時のために、日本留学の早い段階でN4を取っておく。
 最初の年度の11月に実施される日本留学試験を受験し、日本語200以上を目指す。
 11月に無理でも、受験学年の6月試験に命をかけて日本語200以上、あわよくば300超えを目指す。
 その結果を元に9~12月の間に進学先を受験し、卒業後の進路を確保する。
 それでだめな場合、まずは特定技能1号で逃げて、臥薪嘗胆、捲土重来を目指す!!

 正に、日本語学校の『王道』です!!
 今まで進学に失敗してビザ延長目的で訳の分からない『ビザ取り専門学校』や在留管理が出鱈目な『いらっしゃいませ大学』に無駄金を払ってきたのが、必要なくなるのです。また、これまで専門士学士の資格をいい加減に授与してこれらの称号を貶めて来た『ビザ取り専門学校』『いらっしゃいませ大学』が駆除されるのです!



 さぁ、どうしましょうか?
 どの方向へ船を向けるかによって、たどり着く場所は宝島だったりワールドエンド(世界の果て)だったりします。船主は船のオーナーかもしれません。けど、舵を握って帆を進めるのは船長であり、進路を測定するのは航海士の仕事です。
 この巨大な波(いや、強風、嵐かもしれません)が、今、やってきたのです!
 このモンスター級の嵐が、約780隻にも膨れ上がった日本語学校たちに襲い掛かってるのです!!

 皆さんの日本語学校は、どんな道を進みますか?



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