なぜ入管によって在留資格の結果が違って見えるのか
――行政の「不干渉」と地域差
前回の記事では、日本の行政には、民間企業や個人の活動に対して、法律で定められた範囲を超えて自由に介入することはできない、という基本的な考え方があることを説明しました。
では、この考え方を入管行政に当てはめると、ひとつの疑問が出てきます。
「同じ日本なのに、なぜ入管によって在留資格の結果が違うように見えるのか?」
実際、出入国在留管理庁は、地方出入国在留管理局・支局ごとの在留資格認定証明書の受理件数、交付件数、不交付件数などを統計として公表しています。現在公表されている統計には、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡など、各地方局・支局別の数字が掲載されています。
そのため、地域によって「交付された件数」や「不交付となった件数」に違いがあること自体は、統計から確認できます。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
「東京の入管は甘い」「○○の入管は厳しい」
と、単純に結論を出してしまうことです。
なぜなら、各地域に集まってくる申請そのものが違うからです。
たとえば、ある地域には大学や大企業が多く、別の地域には日本語学校や専門学校、特定の国・地域からの留学生が多いかもしれません。
申請者の国籍、在籍する学校、所属機関の状況、学歴、経費支弁能力、過去の在留歴、提出書類などが違えば、当然、審査の結果も変わってきます。
つまり、
「地域によって結果が違う」ことと、
「地域によって審査基準が違う」ことは、同じではありません。
ここは非常に重要なポイントです。
そもそも、在留資格認定証明書の交付申請には標準処理期間が示されており、現在、入管庁は申請から処分までの平均処理期間を地方局別に公表しています。また、令和6年10月以降は、より細かく月単位で公表されています。
さらに、審査の途中で追加資料の提出を求められることもあります。つまり、入管の仕事は、提出された書類を機械的に受け取って終わり、というものではありません。必要に応じて資料を確認し、申請内容を審査する仕組みになっています。
ここでも、行政の「不干渉」という考え方が関係してきます。
行政は、申請者の人生や企業の経営に代わって「こうするべきだ」と決める存在ではありません。
しかし、法律上の要件を満たしているかどうかを確認することは、行政の仕事です。
たとえば、企業が外国人を雇用する場合でも、「この会社は外国人を採用すべきか」という経営判断を入管がするわけではありません。
企業が採用する。
外国人が働く。
そこまでは、基本的に民間の活動です。
そのうえで、その外国人が日本で行おうとしている活動が、申請した在留資格の要件に該当するのか。
必要な資料がそろっているのか。
法律上問題がないのか。
そこを行政が確認するわけです。
したがって、入管行政を理解するときには、
「入管がどれだけ厳しいか」
という感覚だけで見るのではなく、
「法律上、入管には何を審査する権限が与えられているのか」
という視点が必要になります。
そして、もうひとつ重要なのが、「結果」と「基準」を分けて考えることです。
地方によって交付率に違いが見られたとしても、それだけで「地方ごとに別々の基準で審査している」とは言えません。
反対に、現場で「地域によって審査の感触が違う」と感じる人がいるのであれば、どのような申請者が、どの地域に、どのような資料を提出して申請しているのかまで調べなければ、その理由は分かりません。
これは、入管問題を考えるうえで非常に大切な姿勢です。
数字を見る。
その数字の背景を見る。
そして、確認できた事実と、そこから推測されることを分ける。
入管行政についても、この原則は変わりません。
「○○の入管は厳しい」「○○なら通りやすい」といった噂だけで判断するのではなく、地方局別の統計や審査処理期間、申請制度そのものを確認していく。
そうすることで初めて、「なぜ同じ日本なのに、地域によって結果が違って見えるのか」という問題の本当の姿が見えてくるのではないでしょうか。
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