Can-do系の教科書で学習する日本語では、それぞれ会話が用意され、それを練習していくところから始まると思います。今日はこの場面、今日はこの場面、といった形で学習を進めていきます。
 『①導入』で、その日の授業で学ぶ語彙を覚え、『②練習』でその日の授業で学ぶ文法を練習し…。これまで文法積み上げ式の学習に慣れてきた日本人からすれば、体系的な文法学習をせずに進んでいくこの教授法、いわゆるCan-doシラバスに不安を覚える方もいらっしゃるようです。
 文型(構造)シラバスしか知らない先生の中にもかなり不安を抱いてしまう方もいらっしゃるようです。
 しかし、その心配はありません。
 その授業その授業で学習する項目項目を『点』と考えた時、これらの授業を積み上げていくことで自然にその『点』が『線』で繋がり、やがて『面』になって行くのです。

 これは、実際にアメリカの公民館などで移民対象に行われている英会話教室でも実証されています。

先生「はい。今週で何か困ったことがありましたか?」
移民「市役所へ行って困りましたぁ~。」
先生「はい。皆さんの中にも同じように困った方はいらっしゃいますか?」
移民たち「(挙手)。」
先生「では、他の方も今後のために今日は『市役所へ行って(英語で)住所変更する練習をしましょう!」

 こんな具合に授業が進んでいきます。
 be動詞からコツコツと積み上げていってる暇などありません。アメリカに住んでいる外国人からすれば、英語が使えることが重要ですから。

 なら日本語学校に通う外国人たちは?
 そう。
 49課で初めて敬語を学習するような教科書なんぞ使っている場合ではないのです!
 それが今文化庁が進めている日本語教育改革です。


 ただ、これだけでは問題が生じます。それは、教科書に書いてある会話の質問文或いは、練習する例文は、相手の答えがあらかじめ想定されている質問文だという問題です。
 我々の外国語学習でも、実際に会話をしてみると思い知るでしょう。 想定された返事なんて返ってきません。
 Do you like Sushi ?
 なんて一生懸命覚えて使ってみても、
 Yes,I do.
 と答えてくれる人が何人いるでしょうか(笑)。

 そこでこれらに対処するトレーニングが必要です。それが『インター・アクション』です。

 『インター・アクション』とは、定義的には『教師と学習者、学習者同士でのさまざまな情報のやりとり』とされ、『学習者によって積極的に作り出されたインターアクションは、インプットの理解可能化を促進する。質問したり、相手の発話を注意して聞いたりすることによって、一旦は理解不可能であったインプットも理解可能にされていく。また、意味を理解するためのインターアクションでも、具体例を出したり言い換えたりして、相手が何を意味しているかについて交渉するような形で相互の理解を進めていくことができる。』と説明されています。

 要は、実際の場面に飛び込め!ということです。
 教科書どおり、パターンどおりに学習する域から、全く想定されていない会話が存在する世界で『やりとり』をし、訓練していくということです。この繰り返しトレーニングを積むことによって第二言語習得が進んでいくのです。
 …って、偉そうに言ってますが、これを聞いて『なぁんだぁ~』って思う人がほとんどでしょう(笑)。
 けど、その重要性を思い知っていないがゆえに、皆さん、軽く見てしまうようです。

 また、これを繰り返していくうちに、受容(読む・聞く)した日本語を母語に翻訳して理解し、その返事を日本語に訳して産出(話す・書く)という一連の工程が面倒くさくなり、いつの間にか母語を介さず日本語で直接対応(やりとり)しているという状態へと成長していきます。これがインター・アクションの醍醐味です。
 そう!
 日本語に限らず第二言語習得には、まず『言語知識』が重要で、その次に4技能トレーニング、そして、インター・アクションです!
 90分間、机に向かって眠くなるような先生の講義を聞くよりもネイティブ・スピーカーとわずか5分、インター・アクションする方が遥かに第二言語習得が出来るのです。
 その重要性をしっかりと認識しましょう!

 さて、ならそのインター・アクション、どこでやればいいのでしょうか?
 うさぎ団では学習者たちにインター・アクションを行わせるため、学校行事を利用しました。
 基本、学校行事って楽しいでしょ?イベントでも構いません!
 楽しいから会話が弾むんです!
 ジュースとお菓子を買ってきて、パーティーをするのだっていいんです!
 楽しくおしゃべり(やりとり)するんです!
 …日本語学習者たちが日本語で。

 けど、思考言語が日本語日本語教育について何も知らない日本人からすれば、この学校行事は遊んでいるようにしか見えないようです。

 立場を変えて考えて下さい!
 もしあなたのお子さんが、子ども用プールに水を張って浮かべたヨーヨーで、友達とヨーヨー釣りを楽しんでいたら、この姿を見てどう思いますか?
 遊んでいるようにしか見えないでしょう(笑)。
 けど、そこで友だち同士交わしている言葉がドイツ語だったらどう思いますか?そして、わきに立って一緒に喜んでいる先生がドイツ語で指示を出し、それに対してあなたのお子さんがドイツ語で返事をしたり質問したりしていたら、それでもそのヨーヨー釣りは遊びに見えますか

 もしあなたのお子さんが、安物のかき氷器械を囲んで楽しそうにかき氷を作り、いろんなシロップを混ぜて不気味な色のかき氷を作ってみたり、友達にちょっかいだしたりしながらかき氷を食べている姿を見たらどう思いますか?
 遊んでいるようにしか見えないでしょう(笑)。
 けど、そこで友だち同士交わしている言葉がフランス語だったらどう思いますか?そして、わきに立って一緒に喜んでいる先生がフランス語で指示を出し、それに対してあなたのお子さんがフランス語で返事をしたり、分からない単語の意味を質問したりしていたら、それでもそのかき氷パーティーは遊びに見えますか

 記事末の一覧表を見ていただければわかりますが、うさぎ団は、ハロウィンパーティーに重点を置きました。それは10月末のイベントで、来日したばかりの10月生にとっては「異文化適応」のハネムーン期、4月生にとっては半年たった「危機」の前後、そこで学校全体でお祭り騒ぎです。
 先生方には、その日、ご協力いただいてコスプレをしていただきます。
 さらに、その日、一度きりの授業をデザインしていただきます。
 デザインで盛り込んでもらいたいのは、CEFR(能力記述文)判定をしていただく内容です。
 総合的な判定を、クラスを超え、日本語教師同士の枠を超えて判定していただきます。
 それでもこのパーティーは、ただのバカ騒ぎだと思いますか

 楽しくてテンションが上がればなお良し
 自分の気持ちが伝えられずにうずうずしてたらなお良し!!
 想定されていない返事を聞き、更に言語習得を進めていく、それがインター・アクションです。


 はい。
 ご理解いただけない方に申し上げます。
 私が新人の頃、散々いじめられた(当時、パワハラなんて言葉はなかった)言葉を申し上げます。
 そういう方は、

 養成講座からやり直せ!!

 …です(笑)。

 日本語学校の学生にとってはバイト先なんてのもインター・アクションの場になりますが、中には、一言も日本語を発しないバイト先の学生もおり、またそれ以前に能力の低い日本語教師の授業では一方的な講義をされてしまったりします。
 それらへの対策としても学校行事は絶好の機会です。
 一斉に行い、CEFR判定もしてしまうのです。

 うさぎ団が実施した学校行事(イベント)では、どの行事(イベント)でどのCEFRカテゴリを評価するか一覧表にしましたので、ご参考までにご覧ください(クリック/タッチすると画像が開きます)。


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 お勧めします。
 ぜひトライしてください!!


 次回は、うさぎ団式『CEFR判定』についてアップできたらと思います。




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