【外国人留学生に対する生活指導:交通ルール①】

 意外に思われるかもしれませんが、外国人留学生に教える生活習慣の中で私が最重要視しているのが交通ルールです。…なんて書くと「あたりまえだろ!」って笑われるかもしれませんが(笑)、「赤信号で止まれ」なんてレベルの話ではありません。赤信号で止まらなければならないのは世界共通のようで、問題は、それがどの程度守られている国なのか、限度を教えなければならないということです。
 これって、あらゆる物事に通じるんだって、これまでの日本語教師としての経験則として思い知ってきました。

 そんな中でも、今回の記事の題名のような『通行区分』の話は丁寧に指導します。

 例えば、お隣の韓国から来た留学生。
 ご存じのとおり、韓国の自動車はアメリカと同じ左側通行です。それに対し、日本はイギリスと同じ右側通行になります。この違いがどのようなところで現れてくるのでしょうか?

 まず、個人的なお話から入りますが、実は最初に勤めた日本語学校時代、まとまった金が入り1級小型船舶免許を取得しました。当時の小型船舶免許は4級まで分けられていて、その最高レベルの免許を取得したのですが、その際、あらゆる級の実技で徹底されたのは「船舶は世界共通、左側通行だ」ということでした。船舶同士の衝突事故のかなりの割合が、この通行区分を守らなかったことが原因で起きているそうです。
 これはどういうことでしょうか?

 皆さんもぜひ考えてください。
 皆さんの日常生活で道を歩いていて、前から車が来たら、皆さんはどちら側によけようとしますか?特に車の免許を持っている方なら分かると思いますが、いわゆる『対向車』はどちら側にハンドルを切ってよけようとしますか?
 その答えはおそらく左側だと思います。
 もちろん細い道だの歩行者と自動車だのと、状況によって変わるのは当然ですが、ここでは身にしみついている日本人の習慣として考えてください。
 日本は、自動車が左側通行の国です。自動車のハンドルも、すれ違いの際、確認しやすいように右側についている、いわゆる、右ハンドルです。ご想像いただけるように、右ハンドルの自動車を運転していて前から対向車が来たら、無意識のうちにハンドルを左に切って、対向車の左側によけようとします。これは、無意識以前に自動車教習所でも訓練されるかと思います。
 そう。
 自動車が左側通行だから、よける時は左側にハンドルを切るという習慣が体の芯まで染みついている、それが日本人です。

 ここで、船舶の話に戻ってください。
 船舶の世界では、モールス信号の類だけでなく、全世界共通、右側通行が義務付けられています。そのため船舶免許の実技の際には、対向船に対し舵を右に切って『右側によける訓練』をさせられます。これは『船舶の常識』という以前に、海上に不慣れな免許教習生に陸の上で運転している自動車の感覚が染みついているため、海上で無意識に舵を左へ切ってよけようするのを防ぐため、徹底して行われます。この舵の切り方が、船舶衝突事故の最大の原因だからです。
 例えば、対向船の操船者が無免許だったり海上に不慣れだったら、陸の上の自動車の感覚で対向船に対し舵を左に切ってよけようとします。それに対しこちらが免許取得者なら、船舶のルールに従い右に舵を切ってよけようとします。対向船が舵を左に切り、自分が舵を右に切ったら?
 衝突事故の発生です。
 小型船舶では比較的少ないそうですが、水上バイクの場合、かなり無免許で乗っている人がいるそうで、その無免許ライダーが陸の上の感覚でハンドルを切り、ガンガン船舶に激突しているそうです。


 さて、これを自動車に当てはめてみましょう。
 生活費に困っている外国人留学生でも奨学金を受けたりして余裕が出てくると中古で自動車を買って行動を走る留学生が出てきます。特に、私の卒業生でも、大学に進学した韓国人留学生などはもともと余裕があったりして中古車を買ったり先輩から譲ってもらったりして、日本の公道を運転している学生がいます。
 皆さんの周りにもそんな外国人がいたら聞いてみてください。
 右側通行の国から来た外国人が、左側通行の日本の公道を走るとき、ヒヤッとしたことがあるかどうかを。
 そう。
 ご想像通りです。
 右側通行の国から来た外国人たちには、前述の船舶免許の例と同様に、無意識の中に彼らの習慣が染みついているのです。
 例えば、日本の交差点で右折しようとしたとき、うっかり右側車線に入ってしまったことがあるそうです、って、実は左側通行の日本人が右側通行の国で左折しようとして左側車線に入ってしまう、うっかりミスもあたりまえのようにあります。私自身、海外で運転したとき、ついついどっち側通行だったか意識しなおす場面が何度もありました。

 また、これは何も自動車に限ったことではなく、自転車やバイクでも同様に、うっかり自分の国の公道を走っている感覚で運転してしまい、衝突事故を起こしてしまうのです。
 習慣というのは怖いもので、頭の中では理解していても、ついつい考え事をしながら自転車に乗っていたりすると、無意識の中から自分の国の習慣が出てしまい、突発的な出来事に対応してしまいます。前から自転車が来て、それがぶつかりそうになったとき、日本人が左によけようとして、彼らが右によけようとして、事故が起きます。

 ぜひ、外国人に教えてあげてください!
 彼らのため、以前に、日本社会のためでもあります。
 普段、我々が当たり前と思っていることも、初めて日本に来た留学生にとっては知らないことばかりです。そんな知らないことを教えてあげるのも、日本語教師の仕事だと思っています。



 たくさん、たくさんありました。 
 私たちには当たり前でも、彼らにすれば全く違うということが。
 そんな経験を、どんどんアップしていきたいと思っています。

 ということで、この続きはまた今度。





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